純愛カタルシス💞純愛クライシス
「まったく。忘れ物を取りに帰ったらこれだ。幸恵、また若い男を家に引っ張り込んだのか?」

「違うわ。このコに裸の写真を撮られて、それをネタに体の関係を強要されたの!」

「幸恵、もう少しマシな嘘をついたらどうだ」

 幸恵さんが言ったことが信じられず、殴られた痛みや口内に滲む血の味を忘れて、ベッドにいる彼女を見上げた。

 すると俺の視線に気づき、蔑むようなまなざしで俺を見るなり、小首を傾げながら口パクで告げる。

(ア・キ・タ)

「え……?」

 驚く俺の視線を振り切るように、幸恵さんはあさっての方を向き、長い髪を掻き上げつつ、ダルそうに大きなため息を吐く。

「アナタ、忘れ物のスマホは玄関に置いてあったでしょ。どうしてここまで戻ってきたの?」

「見慣れない男物の靴があれば、おまえが男を引っ張り込んだとわかるだろ。わからないようにやれと、いつも言ってるのに。おい、若いの!」

 旦那さんはショックでその場から動けなくなってる俺の頭を叩きながら、声をかけた。恐るおそる顔をあげたら、嫌なしたり笑いで見下ろされる。

「どうせ大学生なんだろ。慰謝料なんて払えないことがわかってるし、もう幸恵に逢わなければ、このまま見逃してやる」

「すみません、でした……」

 そのひとことを言うのがやっとだった。頭の中では、今まで幸恵さんと一緒に過ごした思い出が、走馬灯のように流れていく。

「幸恵の性欲が人並み以上で、俺の仕事がこんなだし、かまってやれないところもある。ホストだのデリヘルなんかに金を使われるより、すぐ傍にいる飢えた年下男を引っかけたら、タダで発散できるんだから、お安いもんだよな」

「性欲の、は、発散?」

「惨めな姿を、いつまでも晒してんじゃねぇぞ。早く出て行け!」

 言いながら背中を蹴られてしまい、蹲りながら寝室を出る。自宅がすぐ傍なのがさいわいだった。

 もうこのときは記憶がぐちゃぐちゃで、どんな格好で帰ったのかもわからない。仕事に行く時間になっても動けずにいる俺に、会社から電話がかかってきたが、出ることも無理な状態だった。

 どれくらいの時間を、茫然自失で過ごしたのか。気がついたらアキラの住むマンションまで来ていて、ピンポンを押した。

「はーい、どなたですか?」

「俺……」

「成臣?」

 俺の返答を聞く前に、扉が大きく開け放たれた。アキラの顔を見たら涙が止まらなくなり、自分よりも大柄な体に縋りつき、声をあげて号泣したのだった。
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