冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
いつも通りのポーカーフェイスなのでなにを考えているのかはわからないが、雑炊を冷ます私の行動が気に入らなかったのだろうか。
「冷まさないほうがよかったですか」
「いや、別にそうじゃない」
充さんが私からふいっと視線を逸らした。
なんだろう今の態度。やっぱり冷まさないほうがよかったのかな。でも、このままだとさすがに熱いと思う。口の中が火傷してしまったら大変だ。
風邪を引いている彼に熱々のものを食べさせるわけにはいかないので、しっかりと冷ましてから充さんの顔の前に雑炊ののったレンゲを持っていく。
「どうぞ」
彼の視線が再び私に戻った。一瞬、目が合って思わずドキッとしてしまう。
よく考えてみたら、充さんに食事を食べさせるというこの行為はかなり恥ずかしいかもしれない。
そんなことを思ってしまったせいで、途端に心臓が早鐘を打ち始める。手まで震えてきてしまった。
一方の充さんはやはりなにを考えているのかわからない表情のまま。たぶん私のような緊張感はないのだろう。
レンゲを持っている私の手首をそっと掴み、自身のほうへ軽く引き寄せる。そんな充さんの行動に私はさらに心臓が大きく跳ねて、顔がじわじわと熱を持ち始めるのがわかる。