冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
しばらくすると小鍋の中の雑炊は空になる。充さんは昨夜からなにも食べていなかったのでお腹が空いていたのだろう。完食できるくらいなのだから体調も少しは回復しているのかもしれない。
そのあとは自宅に常備してある市販の風邪薬を飲んで、充さんは再びベッドに横になった。
「なにかあったら呼んでくださいね。私はリビングにいるので」
ゆっくり寝かせてあげるため寝室を出ていこうとしたのだが、布団の中から伸びてきた充さんの手が私の手をぎゅっと掴む。
「もう少しここにいてくれないか」
「え?」
「そばにいてほしい」
まさかそんなことを言われるとは思ってもいないので自分の耳を疑ってしまう。でも、私の手を握る彼の手にそっと力が込もるのがわかり、聞き間違いではなかったのだと気付く。
私にこんなことを言うなんて、さすがの充さんも風邪を引いて心細いのかもしれない。
「わかりました。充さんが眠るまでここにいますね」
近くにある充さんの仕事用のデスクからイスを持ってきて腰を下ろす。