冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
ふと先週から続いていたピリピリとした雰囲気がいつの間にか消えていることに気が付いた。
本当なら彼の誕生日を祝うことで仲直りするはずが、彼の風邪をきっかけにそれができたようだ。そのことにホッと安心していると、「菫」と名前を呼ばれた。
「すまなかった」
突然の充さんの謝罪に、いったい彼がなにに対して謝っているのかわからず首を傾げる。
「昨日の俺の誕生日。料理とケーキを用意してくれたのに、食べられなくて悪かった。無駄になってしまったな」
どうやら充さんは昨日の誕生日会のことを気にしていたらしい。それに対して私は「大丈夫ですよ」と笑顔で答える。
「ビーフシチューを作ったんですけど、まだ食べられるので私が今日中に食べちゃいます。ホールケーキはさすがにひとりでは食べ切れないし、充さんも食べられる状態ではないから、悠さんに声を掛けました」
「悠に?」
突然、弟の名前が出てきたせいか、充さんが眉をひそめたので説明をする。