課長に恋してます!
 驚いた顔をした一瀬君に何も言えないまま手を握っていた。
 何か言わなければいけないと思うが、言葉にしたら何かが壊れそうで怖い。
 僕の手よりも小さくて温かい手をずっと握っていたい。

 しかし、僕にはその資格があるのだろうか?
 一瀬君の気持ちを受け入れて、このまま進んでしまっていいんだろうか?

 二、三年のうちはいいかもしれないが、長く一緒にいれば19も年上の僕のせいで一瀬君に苦労をさせないだろうか?

 どう考えたって僕の方が先に老人になるし、一瀬君より先にあの世に行く。
 そうなった時、一瀬君は僕といた事を後悔しないだろうか?

 僕といる事は若い彼女の時間を奪う事にならないだろうか?


「課長、どうしたんですか?」

 黙り込んでいると一瀬君が心配そうに言った。

「ごめん。酔ったんだ」

 一瀬君の手を解放した。
 やっぱり触れてはいけない。

「私も酔いました」

 今度は一瀬君がカウンターの下に逃げた僕の右手を握った。
 伝わってくるふわふわした手の感触と体温に思わず握り返しそうになる。
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