秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
桜は桜なりに、ずっと悩んでいたと言った。

女性が社長に就くことは、決して珍しいことではなくなったけれど。

でも業界によっては、古い慣習のようなものが残っていたり、ジェネレーションギャップがあったりと、上手くいかないことだってある。

特に俺が秘書を離れてからは、藤澤親子によって次々に仕掛けられた波に、精神的にかなりまいったのだという。

「直生がきてくれなかったら、全部手放していたかもしれない。もしそうなっていたら、会社は・・社員は・・」

苦しそうに桜が俯く。

前社長はそういった状況が起こることを見越してか、桜に書き残していたのだという。

『どうしても別の道を選びたくなったら、必ず服部に相談するように』

そして親父には、もしその時が来たら受け入れてやってほしい・・と。


「おじさまや直生に、会社を押し付けようとして・・ひどい社長よね、私」

「そうじゃないだろう? 会社と社員のことを守ろうとしたからじゃないか」

「周りはそうは見てくれないわ」

「なんだ、俺の言うことより、周りを気にするのか?」

「・・・・」

「それに俺は、絶対に1ヶ月で戻るって決めてた」

「・・そういうの、先に教えてよ・・」

「『絶対』は無いからさ」

「バカ・・・・。本当に辛かったんだからね」

「もう絶対に離れないよ」

「『絶対』は無いって言ったくせに」

「愛してるよ」


そんなこと言って、騙されないからね!と言いつつ、照れている桜がすごく可愛いかった。

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