秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
そのまま桜さんを腕の中に収めていたら、気持ちが爆発してしまいそうだったから。

あえて、俺は桜さんに回していた腕を解いた。


俺を見上げた桜さんの視線に、少し艶っぽい揺らめきがあったけれど、あえてグッと堪えた。


「今夜は、やめておきます。桜さんをめちゃくちゃにしてしまいそうだから」


俺がそう言うと、桜さんはクスッと微笑んだ。


「でも・・キスは、してもいい?」

「・・うん」


二度目のキスは、一度目より深くなった。

ふたりの吐息と、唇が重なり合う音が続く。


「ふ・・ぅ・・・・」


他の誰かがいるわけでもなく、ふたりしかいないこの状況で。

このまま、近くのソファに押し倒してしまい気持ちでいっぱいだけれど。

今夜は、違う方法で桜さんを癒すと決めたから。


「桜さん・・今夜は一晩中そばにいる。だから、もう寂しい思いなんてさせない」


そう言った俺に、桜さんはほろりと涙をこぼした。


その瞬間。
なぜか。


グゥ〜。


俺の腹が鳴った。


「・・っ、ごめん。いい雰囲気だったのに」


いたたまれず苦笑いしていると、泣き笑いした桜さんが『ご飯温めるね』と言ってくれた。


それから一晩中、俺たちは飲みながらいろんな話をした。

前社長の話をして、ふたりで泣いたりもした。


さすがに疲れて、明け方になる頃に、俺たちは手を繋いで眠った。
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