秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
桜の目は、俺を突き抜けて、さらにその先を見据えているような気がした。


でも、言う通りだ。
俺は完全に、藤澤の言葉に囚われている。


ふっ、と肩の力が抜けた気がした。


「俺が抱いたのは『彼女』じゃなく『社長』かな?」


そう言うと、桜も苦笑いしていた。


俺は桜を後ろから抱き寄せた。


「なぁ、桜」

「うん」





「俺と、別れてほしい」




ビクン、と桜の肩が揺れた。

そして、すぐに細かく震え始めた。


泣かせているのは俺だから、泣くなとは言えなかった。




「・・・・待っていても・・いい?」




消えそうな声で桜は言った。


「それは・・」


約束できない。
何の確証も、今は無いから。




「愛してるわ、直生」




桜はそう言うと、俺の腕の中から、そして部屋からも出て行った。


「くっ・・」


俺は目を閉じて、両手を固く握った。


でも、覚悟は決まっていた。


何よりも大切なものを、自分の意思で、手放したのだから。


俺はベッドの上に桜への贈り物を残し、顔も見ずに去った。
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