秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
「自分の息子をからかうなよ」

「だって、お父さんと玲生(れお)は見慣れてるけど、直生は滅多にその格好しないじゃない。似合うわね。惚れぼれするわ」

「何言ってんだよ。まぁ、普段は『山脇物産の秘書』だからな」

「久々に、表舞台に立つのね」

「まぁ・・な」



そう・・俺は『専務』でもある。

もはや、どちらが本業かなんて分からないが。


普段は出社することなく部下を動かしているから、実績はあっても、社内で俺を見かけることはほぼ無い。

実際に社内では、俺は海外に住んでいてたまに日本に帰って来るという設定だ。


実は国内にいて、まさか他の企業で社長秘書をしているとは誰も思わないだろう。

もちろんそこには、親父の思惑があったのだが・・。


「そういえば、今日は『会長』も『社長』もオフィスにいるらしいわよ」

「へぇ、ふたり揃って・・それは都合がいいな。親父も兄貴もヒマなのか?」


そう言うと、母親はクスクスと笑った。


「『専務』が久々に出社するからでしょ。ふたりとも嬉しいのよ」

「・・そうなのか?」


食事を済ませた頃、窓の外を見ていた母親が『迎えが来たわ』と言った。

外に出ると、普段は兄貴を乗せている車が停まっている。


「専務、お久しぶりです」

「すみません、俺の迎えまで頼んでしまって」

「いえ。社長がお待ちかねです。行きましょう」


兄貴の第二秘書が運転する車で、俺は本社ビルに向かった。
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