秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
木内社長との契約を無事に終え、後を西川に任せて、俺は先にホテルに戻った。

はやる気持ちを抑えて、スマートフォンを手にする。


『もしもし?』


ああ、桜の声だ。


「桜、俺」

『直生? いまどこにいるの?』

「地球の裏側」

『裏側・・ブラジル?』

「そう。よく分かったね」

『父が何度か話してたのを思い出したのよ。そういえば、父の尋ね人には会えたの?』

「会えたよ。帰ったら詳しく話す。それより桜・・」

『なに?』

「明日の夜、こっちを出るんだ。俺・・桜のところに帰っていいか?」


桜が黙る。


「桜?」


『直生・・帰ってきたら、何するつもり?』


桜の声が、急に低くなった。


『私、もしかして直生に騙されてるんじゃないかしら?』


「桜、何言って・・」


『南米まで、何しに行ったの?』


「それは・・」


出発前、親父に忠告されていた。

部分的に話しても、逆に話が難しくなるだけだ・・。


「桜・・あの・・さ」

『・・・・』

「実・・は」


ああ、何から話せばいいんだ・・。




『嘘よ』




焦る俺に、少し笑みを含んだような声で桜がそう言った。


「え・・?」

『直生が何も話してくれないから、ちょっと脅かしてみただけ』

「何だ・・よ」


身体から力が抜けた。
背中を、冷たい汗がつたう。


『言ったじゃない。私、直生を信じてる・・って』
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