秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
そういえば桜が、言っていた。

『もう会社を手放して俺と結婚しないか』

そう言われていると。


ここで藤澤と言い合っても仕方がないと判断して、俺はひとまず病院を出た。


さて、どうするか・・。

このままだと、桜が弱っている間に、桜も会社も藤澤の思うように話を進められてしまう。

それだけは避けたい。


ただ、今の状況で桜にひと通りの説明をすることも難しそうだ・・。

俺は、ひとまず実家に帰った。


「直生、何かあったのか? 西川から、帰国が1日早まったと聞いたぞ」

「兄貴・・。桜を、できるだけひとりにしたくなくて早めた。でも、昨日の夜に桜が倒れたらしい」

「らしい? らしいって何だ?」

「俺だって分からないんだよっ!!」


声を荒げた俺に、兄貴が驚いた。


「直生、もう少し詳しく話してみろ。そんなにひとりで何でも抱え込むな」


兄貴の言葉に、目の奥が熱くなった。
油断すると涙が湧き上がる。


「今夜は親父も母さんもいないんだ。ふたりでメシ食いに出掛けた。たまには一緒に飲むか・・親父のウイスキーでも開けようぜ」


キッチンでグラスや氷を用意している兄貴に見つからないように、俺はグイッと涙をぬぐった。

誰かの前で、まだ泣きたくなかった。
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