秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
「うるさい。例の契約、しっかり準備しておけよ。数日のうちに締結するからな」

「はーい!」

「まったく・・頼んだぞ」


桜の肩を抱いてフロアを出ようとすると、桜がくるりと振り返って部下に頭を下げた。


「本当にありがとうございました。お礼は改めてさせてください」


頭を上げた桜を見届けて、ドアを閉めた。

改めて桜の横顔を見ると、もう涙がこぼれ落ちそうになっていて慌てた。


「わっ、どうした桜」

「・・だって、嬉しくて・・・・こんなにたくさんの人たちに助けられるなんて」

「そんなの、みんな桜が好きだからに決まってるだろう?」

「えっ」

「桜が『社長』だとか、俺が『専務』だとか、そういうんじゃなくてさ。人として、好きかどうかってことさ」

「人として・・」

「そう。この人のために、とか、この人と一緒の時間を過ごしたい、とかね。
俺の部下たちは今日初めて桜に会ったけど、みんな桜を好きになったはずだよ。この人のために仕事してたんだ・・って、納得してる」


桜の涙は大粒になり、頬をつたう。

ずっと、ひとりで戦っていると思っていたはずだ。
辛かっただろうし、寂しい思いもさせてしまった。


俺はオフィスの廊下だと認識しつつも、横を通る社員に見えないように、桜を腕の中に入れた。


「涙がひいたら、一緒に帰ろう」


そっと、桜の頬にキスをした。
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