秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
目が覚めた時、桜は俺を見ていた。


「直生も寝てた?」

「桜が・・俺のジャケットをつかんで離さないから、横に寝るしかなかったんだよ」

「ふふ、私のせいにしないで」

「桜、ずっと眠れてなかったんだろ? 桜が横で寝てて、安心した」


桜が俺の頬に手をのばしてきて、包むように触れる。


「直生は・・大丈夫?」

「えっ」

「直生、いつも自分が後回しでしょ? だから、ちょっと心配してた。
男の人だから多少無理はできるのかもしれないけど、辛いのは同じだよね」


桜はモゾモゾと身体を動かして、寝転がったまま俺をギュッと抱き締めてきた。


「『別れてほしい』なんて、藤澤の言う通りにしなくてもよかったのに」

「でもあの時は、それくらいしか方法が無くて・・。桜も会社も、守りたくて・・」


つつっ。

桜に包まれて、涙が出た。


え・・? どうしてだ?

自分の身体の反応に戸惑った。


でも、その理由はすぐに分かった。

そうか、そうだったんだよな・・。


『別れてほしい』と言ったことを、ずっと悔やんでいた。

ほんの少しも・・一度だってそんなことを考えたことが無かったのに。


俺は『別れてほしい』と口にすることで、覚悟を決めたつもりだったけれど。

突然告げられた桜のことを思うと、やりきれない気持ちだったから。
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