俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
そしてまた数日が経ったある日のこと。
「やっとメシだ。涼野、お前なんにするよ」
「この暑さで胃が麺類しか受け付けないので冷やし中華で」
「では僕もそうします」
八時から十七時の早番勤務だったその日、私はお昼になると先輩の石狩さん、信濃さんとともに社員食堂にやってきた。
深澄さんは昨日の夜から上海ステイ中で、帰ってくるのは明日の午後だ。
「軟弱な奴らめ。俺は暑い時こそカレーよ」
石狩さんがリーゼントを撫でつけながら威張っている。
しかし、彼の好みは甘口カレーなので、私は信濃さんと目を合わせて苦笑した。
私、信濃さんの順で食券を購入し、最後に石狩さんが販売機の前で【カレー 甘口】のボタンに指を伸ばしたその時だった。
「ちょっとどいてちょうだい」
石狩さんの背中に制服姿の女性がドン、とぶつかり、彼の人差し指はちょうど【夏限定 激辛カレー】をピッと押した。
「ああっ、俺のカレーが!」
泣きそうな声を出す石狩さんを気の毒に思った次の瞬間、彼にぶつかった女性が私の前に立ちはだかった。
「涼野光里さんだったわね」
「あ、あなたは……」
美しい制服姿の女性は、以前深澄さんと出発ロビーで遭遇したCAの高城さん。