俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
「パイロットというのは、狭いコックピットで同じ姿勢のまま動きません。そして、常に緊張状態を強いられるので、心臓に大変負担がかかる職業のひとつです。スポーツ選手に匹敵するくらいかもしれません」
「スポーツ選手……」
「ですから、心膜炎が治癒した後も、注意深く経過を見ていく必要があります。国交省が定めている航空身体検査の規定に従うのはもちろんですが、お勤めの航空会社さんともよく相談なさって、ご自分の体のためにも復帰は焦らず長い目で見た方がよいかと」
「……そう、ですか」
蓮田医師は親切で……というか、医者として当然のことを言っているに過ぎない。
それはわかっているのだが、俺にとっては非情な通告に聞こえてしまう。
長い目で見るというのは、いったいどれくらいだ?
現場を離れる期間が長くなればなるほど、パイロットとしての実力はきっと衰えていく。
その期間によっては、もう一度空を飛ぶために訓練を受けなければならない。
掴みかけていた機長昇格の夢も、この手をすり抜けて遠くに行ってしまう――。
* * *
目を覚ますと、白い天井と蛍光灯、それから左腕に繋がった点滴が目に入った。
ここは……病院? そうか、俺は空港で倒れたんだったな。