俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない

 しかし、さすがにまだ引っ越しの準備ができていないだろうか? 

 昨日一昨日と会っていたのに、すぐにまた顔が見たくなっている自分に呆れる。

 乗務の前に後ろ髪を引かれるような思いに駆られるのは初めてで、コックピットに入った後は、いつも以上に計器類を入念にチェックする。その最中だった。

「そういえば深澄くん、きみの機長昇格訓練は九月から始めようと思うがいいな?」

 左手の機長席に隣に座る亘キャプテンが、そう言って俺を見た。五十代後半に差し掛かった彼は、白髪交じりのオールバックがトレードマーク。

 いつでも冷静沈着だが冷たいわけではなく、俺たち副機長の意見にもきちんと耳を傾け、コックピットから下りると途端にニコニコ優しい顔になる。空港スタッフの皆から慕われているキャプテンだ。

 今回のフライトは、往路の操縦を俺が、復路を亘キャプテンが担当する。

「はい。よろしくお願いします」

 機長になることは、子どもの頃からの夢。

 両親はもちろん喜ぶだろうし、涼野とも喜びを分かち合いたい。

「期待してるよ」

 俺自身も尊敬している亘キャプテンからの励ましに、気持ちを引き締める。

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