俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
近いうちに、仕事もプライベートも大きな変化を迎えることになりそうだが、きっとうまくやってみせる。
そうこうしているうちに整備士から出発五分前を告げる無線が入ったので、管制官にプッシュバックの許可を求める。
飛行機は自力でバックできないので、トーイングカーという特殊車両で誘導路まで押し出してもらうのだ。
その後も絶えず管制官とやり取りしながら、滑走路まで地上走行する。まっすぐに伸びた滑走路に障害物がないことを確認して待機していると、管制官から離陸の許可が出る。
風は弱く、穏やかな空だ。夏に遭遇しやすい積乱雲の情報も、今のところない。
離陸体勢に入ると、操縦を担当する俺の横で、機長が速度計をモニターしながら速度をコールする。
徐々に激しさを増すエンジン音は、飛行機自身の「飛ぶぞ」という意思を代弁しているようだと、いつも思う。
――安心しろ、俺が気持ちよく飛ばしてやる。
機体の声に応えるようにそう思うのも、離陸時のルーティーンだった。
俺も涼野に負けず劣らず、馬鹿みたいに飛行機が好きなのだ。
そうして機長と連携を取りながら、スカイイーストエアライン羽田発ロサンゼルス行きの便は、空へと飛び立った。