月夜に微笑む君の面影
スラリとしていてバランスのとれた長身に、綺麗に染められた銀色の髪。
長い四肢に、弧を描くすっきりとした眉。
そのしたの二つの銀色の瞳は、長い睫毛に縁取られている。
左右整った顔立ちは、さながらギリシャ彫刻のよう。
今までこんなに完璧な男性を見たことはない。
それなのに、今自分が耳にしたのは幻聴だろうか。

余りにも不振そうな顔をしていたのだろう。
そんなヴィンプを見て、青年は慣れたように小さく笑った。
「安心して?取って食ったりしないわよ」
そう言うと、ヴィンプの手を掴みぐいっと引き戻す。
目を白黒させているヴィンプは礼を言うのも忘れて、青年をまじまじと見つめ続けた。
流石に青年の顔にも困ったような色が浮かぶ。
「だ・か・らぁ、取って食ったりしないったら。オカマじゃないわよ。勿論女でもないわ。私はれっきとした男よ。お・と・こ。まぁ確かに口調はこんなだけど、気にしないで。何て言うのかしら?癖?両親への嫌がらせで使い始めたんだけど、今じゃ定着しちゃったのよ。癖みたいなものだと思ってちょうだい」
苦笑混じりにそう言って、驚かせちゃったみたいでごめんなさいねと、青年はウィンクつきで微笑んだ。
ちょっと面食らいながらもヴィンプは頭をさげる。
「こっちこそ、すみませんでした」
と、一つ頭を下げたところで、霧の中から全身黒い服に身を包んだ男が現れた。
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