ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
「……アラン?」


 扉を開けて外から入ってきた救世主。それは、


「エリオット!!」


 助かった! 助かったよ、エリオット! 一体なぜ急にお前がこんなところに?


「エリオット様、どうなさったの? あら、まあ……」


 エリオットの後ろから現れたのは、マティアスの妹のリンゼイ。ああ、人は多ければ多いほど安心だ。こんな雨の中で、どうしてここに来てくれたんだろうか。


「エリオット様。私たち、見てはいけないものを見たのではないかしら。二人のお邪魔になりますので、ここは何もなかったように去りましょう……」


 おい、待て! 誤解するな! これは、疲れて眠くて座り込んでる俺に、ヒロインが勝手に迫ってきているだけなんだ、信じてくれ!
 リンゼイはエリオットの袖を引っ張って、外に出ようと促した。俺が声も出せず焦る中、エリオットはどこから出してきたのか、大判のタオルを二枚手に取って俺たちに駆け寄る。


「こんなに濡れて……大丈夫か? よければ使ってくれ」
「いや、そういうお前も全身ずぶぬれじゃないか」


 俺から手を離したヒロインが、エリオットとリンゼイの方に向かって小さくお辞儀をする。ちょっと全員で落ち着いて話そう。俺たちがなぜ二人でこの小屋にいるのか、エリオットたちがなぜこの小屋にたどり着いたのか、多分きちんと説明しておかないと誤解が生じるぞ、これは。

< 98 / 244 >

この作品をシェア

pagetop