子作り婚の行方。～年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋～

「噂はそのうち消えるでしょうし。とにかく今後は気をつけます。もう二度と知らない人たちとお酒は飲みません」

「うんうん、気をつけて。でも私はやっはり気になるから噂の源は探っておく」

　水咲先輩は正義感が強い。秘書課の女性たちは普段から横暴なところがあると常々文句を言っているから、なおさら不信感が募るのかもしれなかった。

「特に時野さん。彼女は裏の顔があると私は睨んでる」

　え、水咲先輩まで。

「でも悪い噂は聞かないですよね？」

　時野さんは確か入社四年目だ。水咲先輩は入社七年目だから色々と詳しいが、時野さんの悪い噂は耳にしないと言っていたはず。

「彼女に睨まれたくないから誰も言わないのかもしれない。秘書課の女性はこの会社で一番離職率が高いのよ。関係しているかもしれないし。とにかく調べてみる」

　水咲先輩は最後に「たまにいるのよ」と溜め息をついた。

「お面を被ったとんでもない悪人が。どんな世界にも」

　経験があるのか、とても重みのある言葉だった。