子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 プライベートは意外と穏やかな人なのかもしれないな。

「竜神さん、アメリカには何年くらいいたんですか?」

「うーん。学生の頃からだし、七年くらいか?」

「どうしてアメリカに?」

「ウォール街は世界金融の中心地だからな。この目で見てみたかったんだ」

 なるほど。いきなり中心に飛び込んでみようとするあたり彼らしいと思う。

「お前はどうして商社に就職したんだ?」

「正直に言うと商社にこだわりはありません。雑用が嫌いじゃないので事務職ならどこでも。TATUはお給料がよかったからです。福利厚生もしっかりしているし」

 結婚後の離職率も低かった。結婚は私には関係ないけれど、それは女性にとって働きやすい環境だという証拠だと思うから。

 そして実際働きやすい。
 私は今の仕事にとても満足している。

「給料と福利厚生か、現実的で重要な条件だ」

「そうです。お金は裏切ったりしませんからね」

 料理が次々と運ばれてくる。魚介にお肉にバケット。もりもり食欲が湧いてくる。

「これは生ハム?」
「ああ、イベリコ豚の生ハムだ」

 早速一枚口に入れ――。
「おいしい!」
 噛むほどに広がる旨味。ジタバタしたくなる。
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