俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
 日菜子は目をパチパチする。彼を一目見た瞬間に湧きあがった感情は、大の苦手の蜘蛛を見つけてしまったときのそれに近い。どう転んでも、恋にはならない類のものだ。
 正直にそう告げると、南は安心したように胸を撫でおろした。

「蜘蛛かぁ、よかった! あの人、天性の人たらしだからさ。接客させると、新婚ラブラブの奥さまでもすぐにコロリとなっちゃうのよ」

 それはわかる気がした。あの顔とスタイルで、人当たりもいいのだ。本気になれば落とせない女などいないだろう。
 南はずいっと身をのり出して、日菜子に人差し指を突きつけた。

「これは先輩からの忠告。善には惚れちゃダメよ」

 その可能性はゼロに近いけれど、一応聞いてみた。

「どうしてでしょうか?」
「あいつ、結婚しない主義だから。ついでに言うと、本命も作らないタイプ」

(なるほど。遊び人なのね)

「それからね――」

 南の忠告はまだ続くようだ。

「中野さんもダメよ。爽やかそうに見せかけて、腹黒だから。営業の小西くんは浮気性だからオススメできないし……」

 彼女の話を聞き終えた日菜子は大きくうなずいた。

「要するに、社内恋愛はやめておけということですね」
「そうね。残念だけどそういうことになっちゃう。もし恋人募集中なら、外の人を紹介するよ! グループ会社には結構いい人もいてね~」

 
< 20 / 123 >

この作品をシェア

pagetop