俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
 南はスマホの画面をスクロールしはじめた。アドレス帳からオススメできそうな男性を探してくれているのかもしれない。日菜子はきっぱりと告げる。

「結構です。恋人募集中ではないので」
「あ、彼氏いるの? そりゃそうか。日菜子ちゃんほどの美人なら」
「いいえ。私は……恋愛も結婚もしない主義なので」

(正確には〝しない〟じゃなくて〝できない〟だけど)

「なので、社内恋愛でゴタゴタしたりすることもないので安心してください」
 
 それから、月日は流れて十月。転職して半年が過ぎた。

 時刻は夜九時。

 繁忙期でもないので、フロアに残っているのは日菜子だけだ。

(私もこれを終わらせたら帰ろう!)

 顧客の要望でバスルームをもう少し広く取るよう、図面を修正しているところだ。前職で扱っていた商業ビルより仕事の規模は小さくなったが、住宅は物件ごとに個性があり、違う楽しさと難しさがある。

(思いきって転職を決めてよかったな。毎日がこんなに楽しくなるなんて!)
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