魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
デブリーフィングが終わると、腕時計の針は午後七時を指していた。
この便のクルーは、今夜は全員札幌ステイ。
俺以外は皆、明日の午前中の羽田便に再び乗務する。


「あの~、神凪さん。みんなで食事行きませんか?」


キャリーケースを引いて歩き出すと、後ろから数人のCAが駆け寄ってきた。


「え?」

「私、この間のステイで、美味しいジンギスカンのお店に巡り合って。みんなで行こうって言ってたんですけど……」


一人が俺の隣に回って、上目遣いで誘いかけてくる。


「へえ、いいね」


生返事をした俺に、「でしょでしょ」と踏み込んできた。


「明日フライトなので、お酒は無理ですけど。みんなでお腹いっぱい食べて、親交を深めましょう!」

「悪い。俺、今日はパス」

「え?」


彼女はポカンとして足を止める。
ステイ先での食事会はよくあることだし、普段なら特段断る理由もない。
CAたちも、俺が断るとは思っていなかったのだろう。


「そんなあ……神凪さーん」


俺はヒラヒラ手を振って、歩調を速めた。
途端に、腹がぐーっと鳴き……。


「あー……くそっ」


ジンギスカンへの心残りからか、忌々しさが蘇る。
俺がどこで誰と食事をしようが、椎名はまったく気にしない。
嫌ってほどわかってるのに、俺はなにを遠慮してるんだか――。
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