魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
苦く顔を歪め、スラックスのポケットからスマホを取り出した。
モニターに何件かメールやLINEの着信が表示されていたが、椎名からのものはなかった。
彼女とのトーク画面に、四日前に俺が送ったメッセージに既読がついたきりなのをわざわざ確認して、さらに苛立ちが募る。


――なにやってんだ、俺。
俺に見向きもしない女に、何故固執する?
らしくない自分にかぶりを振って、スマホをポケットに捻じ込もうとして。


「っ……」


ちょうど電話の着信があり、反射的に手元を見た。
モニターに表示された発信人の名前に、思わず目を瞠る。
ドクッと心臓が沸く感覚に足を止め、ごくっと唾を飲んでから、


「……もしもし?」


意識して声を低くして応答した。
かけてきた相手の方が、一瞬怯んだ気配の後。


『あ、あの。お疲れ様です、私、整備の椎名ですけど……』

「業務連絡かよ。わかってる」


妙にたどたどしく名乗る椎名に、俺はわざとぶっきら棒にツッコんだ。


『今、大丈夫ですか?』

「大丈夫じゃなきゃ、出てない」

『フライトは?』

「終わったところだよ」


遠慮がちに訊ねてくる彼女に努めて素っ気なく返しながら、せかせかと歩き出す。


『じゃあ、マネージメントセンターにいますか?』

「ああ。用件、なに?」
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