魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
そんな自分がくすぐったくて落ち着かず視線を外そうとした時、瞳が椎名に近付いていくのを目にして仰天した。


瞳がなんのために椎名を訪ねたか。
この間のこともあるし、俺の話としか考えられない。
なにを聞かされたか気になり、デブリーフィングが終わった後、ハンガーに行って椎名を捕まえようとした。
しかし彼女は戻っておらず、俺は仕方なく瞳を捜した。
そうこうしているうちに、この便の時間が迫ってしまい、心が乱れたまま離陸する羽目になってこのざまだ。


「……くそっ」


誰に対してか、忌々しく舌打ちして、俺はコックピットの窓から駐機スポットを見下ろした。
――ホテルにチェックインしたら、椎名に電話してみるか。
だが、あの時話も聞いてもらえなかったし、電話もLINEも無視され、それきりだ。
明日東京に戻ってから、直接ハンガーを訪ねる方が確実かもしれない。


いや……どうせまた『関係ない』と言われて終わる。
なにを話したか知りたいだけなら、瞳に連絡した方が手っ取り早いか?
らしくなくグルグル考えている間に、音羽さんが戻ってきた。


「さ、神凪君、降りようか。マネージメントセンターに行って、デブリーフィングしよう」


フライトバッグを持って促され、


「はい」


俺も副操縦士席から立った。
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