魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
質問ばかりぶつけてくる椎名を直球で促すと、彼女はちょっと言い淀んだ。
俺は溜め息をつき……。


「用がないなら、俺から話す。この間……」

『これから、会って話せませんか?』


改まった口調に、虚を衝かれた。
一瞬辺りを見回して、ふうと息をつく。


「無理だろ」

『え?』

「俺今、新千歳」


そう答えながら、ビルの正面玄関の自動ドアから出た。


「明日一旦東京に戻るけど、そっちの予定は? 明日が無理なら、しばらく……」

「今日で大丈夫です。私も今、新千歳で」

「……え?」


スマホから聞こえるのと同じ声が、直に鼓膜に届いた気がして、俺はふっと横に顔を向けた。
そして、外の壁に寄りかかっていた椎名を見つけて、ギョッと目を剥く。


彼女も俺に気付いて、「あ」と口を丸く開けた。
スマホを耳から離し、壁から背を起こすと、ペコリと頭を下げる。


「……なにやってるの、お前」


俺もスマホを持った手を惰性的に落とし、その場に立ち尽くした。
椎名は黙ったまま硬い表情で歩いてくる。
俺の前まで来て、ピタリと足を止めると。


「お時間、いただけますか?」


散々無視しておいて、いきなり押しかけて来るとか、勝手だな。
そう言って無碍にしてやりたい。
――なのに。


わざわざ札幌まで来たのか……?
彼女の思惑を測りながら、胸を弾ませている自分に気付いた。
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