魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
俺は唇を結んで警戒心を強めた。


「私、ちょっと安心しました。神凪さんって本心の在処がわからないって思ってたけど……ちゃんと素になって、本気を見せられる人もいるんだなって」


椎名は声のトーンを明るくして、自分の手元に目を落とす。
俺は、心臓がドクッと沸く不快感に煽られ――。


「でも、今野さんが佐伯さんと付き合ってるから。航空整備士なんて嘘つい……」

「ちょっと退いて」

「っ、え?」


席を立ち、テーブルを回り込んで彼女の方に移動した。
隣にドスッと腰を下ろすと、椎名がギョッとして、席の隅まで飛び退く。
その反応に、俺はムッと顔を歪めた。


「そこまで退けとは言ってない」

「な、なんでこっちに……」

「別にいいだろ。俺がどこに座ってお前と会話しようと」


不遜に言い捨て、向かい側から自分のグラスを引き寄せる。
半分ほど残っていた烏龍茶を、ゴッゴッと音を立てて飲み干した。
そうやって、血管が全身で脈打つ感覚と、荒ぶりそうな感情を無理やり抑え込む。


「あの、神凪さ……?」


椎名はボックスシートのギリギリまで身を寄せ、俺を不審そうに見ていたが。


「で?」

「は?」

「俺が今野に本気を見せた。それがなに?」
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