魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
俺はグラスをドンとテーブルに置き、口元を手の甲で拭った。
ちらりと横目を流すと、彼女は口ごもる。


「見てたならわかるだろ。今野は俺に容赦なく怒りをぶつける。本気でムカつくから、こっちも遠慮しないだけだ」


俺は返事を待たずに早口で捲し立て、ハッと浅い息を吐いた。
アップバングにセットした前髪を掻き上げ、グシャッと握りしめる。


「お前にだって。……お前が俺に無関心じゃなくなりゃ、嫌でも本気を見せる」


らしくない――。
どうして俺は必死になって、こんなことを弁解する?


まったくなびかない椎名と話していると、いつも平坦な感情が粟立つ。
苛立つ自分を鎮めようと、再びグラスを持ち上げた。
しかし、飲み干してしまったことに気付き、小さく舌打ちしてテーブルに戻す。


「無関心、って」


俺の剣幕に怯んでいた椎名が、たどたどしく反芻した。


「俺が今野を抱き寄せるの見ても、関係ないんだろ。普通、私を口説いてるくせにって、詰って怒るんじゃないか? それどころかスルー……俺に関心ないってことだ」


自嘲的に言いながら、いちいち胸が痛む自分が不可解でならない。
俺は今まで、恋人にした女が勝手に独占欲を持って、甘えて束縛したがるのに辟易していた。
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