魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
しばらく女はいらないと思っていたが、たまには気分転換になる。
そのくらいのつもりで、席に着いた。


ところが、芽唯に嘘を見破られた。
本気で怒る彼女は面倒くさかった。
風見の手前、適当に宥めすかして丸く収めようと試みたものの、彼女が片想いをする相手を知って気が変わった。
芽唯は佐伯に恋人がいることを承知で、彼を尊敬し、憧れてやまない。
瞳と同じ男に惚れる女の、純粋で逞しい好意を俺に向けさせられたら、気が晴れそうだと思った。


他人に向けた、いつ以来かの欲求。
それは自己中心的な所有欲とか征服欲のようなもので、彼女自身への好意とはかけ離れたものだったはず。
だが、昨夜俺はなかなか思い通りにいかない芽唯の心を求めるあまり、本気を通り越して必死だった。


俺が欲しがるものは、決して手に入らない。
冷静に思い出す余裕はなかった。
初めて知りたいと思った女に、拒まれたくない。
ただその一心で――。


「…………」


思考につられて昨夜の彼女を思い描き、ドクッと心臓が沸いた、その時。


「あれっ。愁……神凪君!」


素っ頓狂な声が耳に届き、ハッと我に返った。


「あ……」


瞳がキャリーケースを引き、歩を速めて寄ってくる。


「一人で黄昏ちゃって、どうしたの~?」


わざわざ身を屈めて覗き込みながら、小気味よく瞳を動かす彼女に、俺はムッと唇を曲げた。
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