魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「黄昏てねえよ」

「椎名さんは?」


瞳は俺の返事はスルーして、キョロキョロと辺りを見回す。


「今日、夜勤なんだよ。早く帰って寝たいんだと……」


俺は溜め息交じりに答える途中で、ピタリと口を噤んだ。
他人から女の所在や予定を問われて答えられたこと、今までにあったか……?


「? 神凪君?」

「あの~……今野さん、先に行きますね」


首を傾げる瞳の横を、クルーのCAが数人、チラチラと窺いながら通り過ぎていく。


「あ、うん。私もすぐ行きます」


瞳は彼女たちの背にそう返してから、俺を見上げた。


「それで、あなたは?」


俺の様子はそれ以上気にせず、気を取り直したように訊ねてくる。


「俺は、ディスパッチルームに顔出しとこうと思って」


俺はそう答えながら、ゆっくり腰を上げた。


「マネージメントセンターまで、ちょっと話していいか」

「うん。いいけど」


キャリーケースを引いて隣に並ぶ俺を、瞳はほんのちょっと怪訝そうに見上げる。


「明日からパリだって? ルートチェックでもしとくの?」

「……まあ」

「ほお。感心感心」


俺は彼女の視線を感じながら……。
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