魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
彼のショーアップまで、あと二十分……。
なにかに突き動かされた気分で腰を上げた私に、


『じゃあこのまま話すから、耳だけ貸して』


神凪さんは、そう続ける。
私は肩からトートバッグをかけて、片手でトレーを持ち上げた。


「神凪さん、あの……」

『昨日の質問。どうしてお前かって……答えようと思って』


下膳カウンターに向かいながら、今どこにいるか訊ねようとした私の耳を、彼の低い声がくすぐる。
私は一瞬ギクッとして、その場で足を止めた。


『お前が佐伯に向ける純粋で逞しい好意を、俺に向けさせたいと思ったっていう、俺なりの動機はあるんだけど……それじゃ納得しないよな』


神凪さんらしくない、ぎこちない口調。
自分でも、私が理解できる言い回しを考えているのだろうか。
最後は、『はは』と乾いた笑い声がくぐもるのを聞いて、私は再び足を動かした。
トレーを下膳して、職員食堂を出る。
朝の早い時間、それほど人通りの多くない通路を、迷いなく右手に折れた。


『俺さ。確かに今野のこと好きだったけど、付き合いたいと思ったことはないんだ』

「え?」

『お前に理解されるかわからないけど……。俺はなにかを欲しがるって、したことなくて』
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