魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
他人にじゃなく、自分に向けるべき質問を、私に投げかけてくる。


『本気の恋愛なんかしたことないし、できなくてよかった。でも本当に、今までの誰かもお前も、瞳の代わりにしようなんて思ったことない』

「…………」

『昨日の帰り、なんかよそよそしかったし、俺相当不信感持たれてるよな。それでこんなこと白状したらより一層嫌われるのはわかってたけど、このまま五日も会えなくなったら、もう本当に俺のものにできなくなるんじゃないか……って焦った』

「どうして?」

『え?』

「どうして、私があなたのものにならなくて、焦るんですか」


電話越しに、彼が虚を衝かれた様子が感じられた。


「たった今、執着も固執もしないって言ったのに、矛盾してる」

『……ほんとにな』


私に言われなくても、自覚していたのだろう。
諦めたような、どこか自嘲的な呟き。


でも、今は諦めてほしくない。
神凪さん自身が知らない気持ちを見つけてほしい。
いや、私が一緒に見つけたい――。
私は逸る思いに背を押され、地面を蹴った。


ターミナル前の通りを駆け抜けて脇道に逸れると、マネージメントセンタービルに続く一本道に入る。
数十メートル先に、黒い制服の広い背中を見つけることができた。
< 143 / 222 >

この作品をシェア

pagetop