魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
佐伯さんが見据える方向に目を留め、ごくっと唾を飲む。


「あ……」


雲を切って、JAKのロゴが塗装された787が現れた。
傾いた右翼上部に、『JA831K』という機体番号も、辛うじて確認できる。
間違いなく、五日前に私たちが整備して、神凪さんに託したシップだ。


風速計を見る限り、滑走路上の横風は強く、今は追い風成分も加わっている。
飛行機の着陸には、かなり不利な風だ。
機体は左右にぶれ、機首を持ち上げられそうになりながらも、高度を下げて近付いてくる。


パイロットは、機体の制御に必死だろう。
コックピットの右側の窓に、微かに人影を捉えることができ――。


「っ……神凪さんっ!!」


私は居ても立ってもいられず、前に駆け出た。


「椎名」


後ろから佐伯さんに肩を掴まれ、踏み止まった。
ヘルメットにも頬にも、風に煽られた雨粒がパチパチと打ちつける。


私は両手で胸元の服を握りしめ、機体を見つめた。
風に戻されるようにして、一瞬翼が水平になる。
バランスが取れたと思った、次の瞬間――。


「あっ」


半ば飛び降りるようにして、メインギアが接地した。
ドスンという衝撃に耐えられず、わずかにギアが跳ねる。
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