魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
肩を竦めて、吐息を漏らす。


「……メインギア、入念にチェックしてもらえるか? 少し浮いたし、負荷かかったかも」

『ああ。今、椎名が見てるよ』

「っ、え?」


俺は一瞬ドキッとして、無意識に腰を浮かせた。
そんなことをしても、機体の真下にいるであろう芽唯の姿を捉えることはできない。
しかし。


『大丈夫。目視できる傷みはありません。一旦ハンガーに引き取って、しっかり点検します。あとは私たちにお任せください』


わずかなノイズに交じって、彼女の声が聞こえた。


『元気に飛ばしてくれて、ありがとうございます』


声の途中で、下から誰かが出てきた。
こちらに身体を向けたまま後退し、俺の視界でも芽唯だと確認できたところで、ぴたりと立ち止まる。
彼女は、顎を上げてコックピットを見上げ――。


『ナイスランディング。お疲れ様でした。お帰りなさい』


ニコッと笑った。
その晴れやかな笑顔を、俺もはっきりと目にすることができた。


芽唯が整備に携わったこのシップを託されたのは五日前のこと。
往復約二万キロを飛行中ずっと、温かいなにかに守られていたような錯覚……いや、確かな感覚に胸が熱くなる。


「っ……」


俺は思わず口元に手を当て……。


「……ただいま」


ボソッと、声をくぐもらせて返事をした。
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