魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「神凪さんも。お疲れ様でした」

「サンキュ」


神凪さんが、目尻を下げて笑った。


「遅かったな。残業だったのか?」


コートの左袖を摘まんで、腕時計を覗かせる。


「風が治まった後、一気に着陸ラッシュになって」

「あー。それで、整備が後ろ倒しか」

「はい。でも、後は夜勤に任せてきました」


目を細めて相槌を打つ彼にソワソワして……。


「あの……神凪さんは、どうしてこんなところに?」


私が躊躇いがちに訊ねると、「は?」と声が返ってきた。


「どうしてって」

「もう十一時ですよ。疲れてるでしょ? 早く帰って休んでください」


私も自分の腕時計に目を落とし、ちょっとあたふたしながら言う途中で、頭上から深い溜め息が降ってきた。


「純粋に心配してくれてるんだよな、芽唯は。でも、マジ切ない」

「え?」

「……待ってたんだよ、お前のこと」


神凪さんは明後日の方向に視線を逃がし、きまり悪そうにガシガシと頭を掻いた。


「は……」


私は言われた意味を深読みして、頬が熱くなるのを感じた。
無意識に頬に手を当て、自分がいつも以上にドロドロに汚れていることを思い出す。
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