魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
昼間顔を合わせた時は窓越しで、地上とコックピットで高さもあった。
遠目でも、汚れた顔を晒していたのが恥ずかしくて堪らなかったのに、今はこんな至近距離で――!


「~~っ」


居た堪れなくなって、私は彼にくるっと背を向けた。


「おい?」


神凪さんが、訝しげに声をかけてくる。


「顔も見たくないほど嫌かよ」

「ち、違います。私の顔、見られたくなくて」

「なんで」

「……汚れてるから」


「はあ?」と尻上がりの声を聞きながら、私は両手で顔を覆い、ズンズン先に歩き出した。


「おいこら、芽唯」


神凪さんは、容赦なく追ってくる。


「どうしたんだよ。今までお前、俺の前で自分のなり気にしたことないだろ」

「わ、私、前の彼に薄汚いって言われて別れて。と、とにかく、顔洗ってきますから、ちょっと待っ……」

「いいから」


グッと肩を掴まれ、いやがおうでも足が止まる。
わざわざ背を屈めて覗き込んできた彼と、同じ高さで視線がぶつかり……。


「っ」

「こーら」


神凪さんが、逃げようとする私の頬を両手で挟んで阻止した。
もはや抵抗のしようがないのに、それでも目を逸らす私に、ふっと表情を和らげ――。


「隠すことないだろ」

「っ、え?」
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