魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「お前、どんなつまらねえ男と付き合ってたんだ。仕事やり切った顔だ。最高に綺麗だよ」

「…………」


自分で言っておいて照れ臭そうにはにかむ笑顔に、私は虚を衝かれて瞬きを返した。


「……なにか言えよ」


黙る私に不服そうに、神凪さんが目線を横に流す。
私の頬の汚れを落とそうとしてか、親指でやや強めに擦った。


「落ちねえな」

「だ、だから。洗ってくるから待ってって……」


私は思わず片目を瞑ってから、彼の手を払おうと顔を背けた。
けれど。


「嫌だ。何時間待ったと思ってるんだよ」


神凪さんは、私の頬を押さえる手に力を込める。
コツンと額をぶつけられ、私はひゅっと喉を鳴らして息をのんだ。


「お前がくれた『お疲れ様』って短いLINE、バカみたいに何度も何度も眺めて……自分の行動に煽られて、会いたくて会いたくて焦れて焦れて。さっきのお帰りなさいに痺れた」


その言葉通り、なにかを堪えるように、ブルッと頭を振る。
目の前で彼の前髪が揺れる様に、私の鼓動が煽られる。
私は意思とは関係なく加速する胸の音を気にして、目を伏せた。


「……あのさ、芽唯」


探るような低い声が、鼓膜をくすぐる。
私は、ごくっと唾を飲んで……。
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