魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
とにかく喋り続けて緊張を和らげようと、私は話題を探して口走った。
すると、神凪さんがくっと笑い声を漏らす。


「本当に? ヒヤッとしたのが本音じゃないの?」


からかうように言われて、恐縮して肩を縮める。


「実は、一瞬……」

「やっぱり」

「でも、佐伯さんにスポイラーのこと言われて納得しました。そうですよね、あのくらいしっかりギアを接地させないと、システムがすぐ反応しな……」

「着いた。降りて」


必死に捲し立てる私の背を、神凪さんがトンと押した。


「ひゃっ……あ」


前につんのめる私を追い越し、通路を奥へと進んでいく。
私の足取りは、限界を超えた緊張でたどたどしくなった。


「どうぞ?」


神凪さんは角部屋の前で足を止め、ドアを大きく開けて、私を中に促してくれた。
私はその少し手前で、一度両足を揃えて立ち止まった。
心臓が喉から飛び出そう……。
ごくんと唾を飲んで意を決して、思い切って玄関に入った。


「お……お邪魔します……」


この五日間、主不在だった部屋は冷えていて、奥からややひんやりした空気が漂ってくる。
神凪さんが、私の後ろで鍵をかける。
カチャンという音に、ビクンと身体が竦んだ。


「あのさ」


頭上から彼の濃い影が降ってきて怯んだ隙に、


「せめて今夜だけは、俺の前で佐伯の名前出すのやめろ」

「え? きゃっ……!?」
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