魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
そっと見上げた横顔に、ふと予感がよぎり――。


「佐伯さん、もしかして……」


佐伯さんが、ハッとしたように口に手を遣った。
失言だったのだろうか。
バツが悪そうに、ぎこちなく顔を背ける。


「知ってるんですね? 神凪さんが、本当は誰を好きだったか」


私が思い切って直球で訊ねると、ひゅっと喉を鳴らして息をのんだ。
取り繕えず、目を泳がせるばかりの彼に、私はつい吹き出した。


「気にしないでください。私も本人から聞いて知ってますから」

「えっ!? 神凪、お前に好きな女のことなんか話したの?」


よほど衝撃だったのか、佐伯さんは大きく目を剥いた。


「彼女にそんなこと、デリカシーなさすぎだろ……って、ごめん……」


慌てた様子で唇を結ぶと、ごくんと喉仏を上下させて先を飲み下す。


「失言ばかりで、重ね重ね申し訳な……」

「いいえ。気遣ってくださって、ありがとうございます」


目を白黒させて恐縮する彼に、私は穏やかな気持ちで微笑んだ。
佐伯さんは、私の反応に戸惑ったようだ。
私は彼から視線を外し、開け放たれた扉の向こうの滑走路に向ける。


「むしろ、ちゃんと教えてもらってたから、今すごい自信持てると言うか」

「自信?」

「! い、いえ。こっちの話」


遠慮がちに聞き返され、焦って惚けた。
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