魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
機体を振り仰ぎながら説明すると、愁生さんがホッと吐息を漏らした。


「で、明日の新千歳便が復帰フライト。お前、乗務だろ?」


大きく腕組みをして胸を張る佐伯さんに、「そうなの?」と目を丸くする。


「縁があるなあ……でも、明日は天気もよさそうだし、元気に飛ばせてやれると思うよ」


軽く背を屈め、滑走路に面した扉から空を覗き込む。


「な」


ゆっくり背を起こしながら、私に向かってニッと目を細めた。


「はい」


この間のパリフライト、羽田を出発する前に彼と交わした会話を思い出し、私も無意識に顔を綻ばせた。
佐伯さんは、視線を交差させて微笑む私たちに、交互に目を向けて探っていたけれど。


「仲のいいことで」


目尻を下げて笑った。


「じゃ俺、831Kをフライトローテーションに加える手続きがあるから」


ヘルメットを外し、乱れた髪を後ろに撫でつけながら、整備事務所の方へ歩いていった。
愁生さんは、スラックスのポケットに両手を突っ込んで、


「イイ男、ね。……ふん」


不遜に鼻を鳴らし、口角を上げた。
でも、佐伯さんの背中を見送る目元が緩んでいるのを見れば、彼特有の天邪鬼の現れだとわかる。


「よかったですね。佐伯さんも安心してくれて」


隣に並んで目元を綻ばせる私を、愁生さんはきょとんとして見下ろした。
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