魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「これから寒くなって本格的な鍋シーズンだし。今度は違う種類も作りますね。トマトチーズ鍋とか、クラムチャウダー鍋とか、シメも美味しくて……」


私は目尻を下げてクスクス笑い、再び蓋を閉じた。


「すぐ食べられますけど、愁生さん先にお風呂どうですか? 飲み物用意しときます。明日フライトだからお酒はダメ……」


話す途中で後ろから抱きしめられて、ひゅっと喉を鳴らして声をのむ。
反射的に強張ったのが伝わったのか、愁生さんは私を抱え直すように腕に力を込めた。


「ど、どうしたの?」


声を上擦らせる私の肩に、トンと額を預けると。


「やっぱり、お前の『お帰りなさい』っていい」

「……は?」


ボソボソとくぐもる声をどうにか拾って、私は意表をつかれて聞き返した。


「いや……この間のフライト後、地上からお前に言われて、わりとジーンとして。それなりに大変なランディングだったから、シップをよく知る整備士の言葉が身に沁みたんだと思ってたんだけど」

「え? ひゃっ……?」


愁生さんは額を上げ、私の耳元に唇を寄せる。


「仕事でも家でもって、公私共に相棒っぽくていいな」


耳朶を掠められてビクッとする私に構わず、その先を囁いた。
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