魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
気恥ずかしくて照れ臭くて、ついつい吹き出した。


「笑うなよ」


機嫌を損ねてしまったのか、愁生さんはぶっきら棒に呟くけれど。


「ごめんなさい」


私はクスクス笑ったまま謝った。


「正直言うと、やっぱりからかわれてるんだろうと思ってました」


窺うように肩越しに振り返ると、愁生さんはムッと唇を曲げていた。


「でも……ほんとに私の顔見るためだったなんて、嬉しいです」


くるりと回れ右をして、上目遣いで付け加える私に、ふんと鼻を鳴らす。


「らしくないフォローするな」

「本音ですよ」

「いい。俺も自覚してるからな。お前に関わってから、俺はらしくないことばかりだ」


開き直って言い捨て、一歩踏み出してきた。
私はコンロに追い詰められ、喉を仰け反らせて彼を仰いだ。


「だから、飯も風呂も後回しでお前を抱きたいのも、抗いようのない情理ってことにする」


情欲を憚らない彼から目を逸らすこともできず、ごくっと唾を飲む。
返す言葉が見つからない間にも、私に降る彼の影は色濃くなっていき――。


その夜。
二人で煮詰まった胡麻豆乳鍋にありついたのは、夕食と呼ぶにはだいぶ遅い時間になってからだった。
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