魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
飛行準備は万全だと自信があっても、実際に操縦桿を握るパイロットの一言は、お墨付きを頂いたみたいで心強い。
私はホッと安堵の息を吐いた。
けれど愁生さんの方は、なにか思案するみたいに顎を摩っている。


「? あの、なにか気になることでも……」

『初めてだな』

「え?」

『出発前に、こうやって芽唯と地上交信するの』


そう言われて、私は一瞬きょとんとしてから相槌を返した。


「普段は主任者資格を持った整備士がお見送りするので、私はスポットに残ってちょこまかしてるんですけど」

『お前、ちっこいから似合うな、ちょこまかが』

「今日は佐伯さんが、『お前がメインギア点検したんだから』って言ってくれたんです」

『……また佐伯かよ』


笑い混じりだった声が、一瞬にして固くなった。
私は、ハッと我に返り……。


「じゃなくて! 佐伯さんは進言してくれただけで、許可してくれたのは主任なんですけど……」

『わかってるよ。もう佐伯の名前聞く度に嫉妬したりしないから、安心しろ』


愁生さんは言葉とは裏腹に、慌てて弁解する私を不貞腐れた口調で遮る。


『じゃあ、今日は芽唯の見送りつきのフライトってことか』
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