魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
『ほう? お前にしちゃ、珍しいことを言う』


地上でカンパニーラジオ越しに聞いている私は、二人のやり取りにオロオロしてしまうけれど。


『まあ、神凪なら可能かもな』


久遠さんがふんと鼻で笑うのを聞いて、思わず瞬きを繰り返した。
だけど。


『だが、フライトブリーフィング前とは言え、整備の彼女とラジオでイチャついているようじゃ、キャプテンは務まらないぞ』


手厳しい指摘にハッとして、気を引き締める。


「そっ、それじゃ神凪さん。フライトまでになにかあったら、いつでも呼んでくださいっ」


愁生さんへの上司評価が悪くなるのを気にして、私は急いで交信を終わらせようとした。
ところが。


『芽唯』


愁生さんの低い声に呼ばれて、インカムに手を遣った格好でぴたりと止まった。


『Good day』


カンパニーラジオを通して鼓膜をくすぐったのは、パイロットと管制官が無線で交わす挨拶。
私は胸がきゅんと疼くのを覚え、目尻を下げて微笑んだ。


「はい」


しっかりと胸を張って、改めてコックピットを仰ぐ。


「では、よきフライトを。お帰りをお待ちしてます」


コックピットとグラウンドが交わす普段の挨拶を返して、深々と頭を下げた。
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