魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
***


すべての乗客が搭乗し、キャビンから報告が入った。


『L2、今野です。ドアクローズ完了しました』

「了解。離陸はオンタイムの予定。まもなくベルトサイン出します」


俺はインターホン越しに答えた。
事務的なやり取りを二三交わし……。


「あ。今野さん」


瞳がインターホンを置く前に、呼び止めた。


『はい』

「ありがとう」

『……は?』


怪訝というより、呆気に取られたような声が返ってくる。


「いや、なんとなく。じゃ、フライトよろしく」

『は、はい』


狐に抓まれたような顔をしているのが、容易に想像できる。
俺は会話を終えて、肩を揺らしてくっと笑った。
今まで何度も同じフライトになったが、こんなことを言ったのは初めてだった。
彼女が不審に思うのも無理はない。


それでも、今言っておきたかった。
二十年以上もの間、幼馴染でいてくれてありがとう。
これからも、一緒に空を飛ぶクルーとしてよろしく。
くすぐったくなるほど、曇りなき純心。
口に出して伝えてみたら、胸のつかえが取れたようで清々しい気分になれた。
しかし、


「こほん」


キャプテンの咳払いを聞いて、背筋を伸ばして顎を引く。
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