魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「え、っ、んっ……!?」


いきなり顎を掴んで上を向かされて、状況を把握する余裕もなかった。
キスされているとわかったのは、唇の感触や温もりではなく、隙間を割って入ってきた熱いものが、口内を蠢く生々しい感覚のせい。


「や……ちょっ……!」


私は固く目を瞑って、背を仰け反らせた。
身体を支えようと片手を床に突き、もう片方の手で彼の胸を押し返そうとする。


整備士の先輩たちより細身でスレンダーな体型のくせに、神凪さんはビクともしない。
それどころか、私の抵抗をものともせず、舌の付け根から巧みに搦め取って、キスを深く艶めかしくしていく。


「あ、うっ……」


グイグイ踏み込んでこられ、耐えるのが精いっぱいだ。
跳ね退けるだけの力が出ず、両方の腕がガクガク震える。
それでも、頭の中で激しく打ち鳴る警鐘が、私に火事場の馬鹿力を与えてくれた。


「やっ……めてくださいっ!!」


首が千切れるくらい捩じって彼の唇から逃れながら、死に物狂いで足をバタつかせ――。


「……!!」


神凪さんが大きく息をのみ、私の上に力なく崩れ落ちた。
唇が離れ、無我夢中で彼の胸を押し退けると、足をバタバタさせてその下から摺り抜ける。


神凪さんは、声をのんで悶絶している。
< 35 / 222 >

この作品をシェア

pagetop