魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
片手で股間を押さえる様を見なくても、自分がなにをしたかは一目瞭然だった。
瞬時に心の中に『ごめんなさい』という謝罪が浮かんだものの、もちろん仏心はかなぐり捨てた。
その代わり、


「さ、最低!!」


力いっぱい罵声を浴びせて、ジタバタと四つん這いでソファまで逃げた。
ソファを支えに立ち上がると、自分のバッグとトレンチコートを引っ掴む。
部屋から逃げ出そうと、一目散に走り出した。
急いでドアを開けようとして――。


「? あれっ……」


押しても引いてもビクともせず焦っていると、


「……バーカ」


背後から忌々しそうな舌打ちが聞こえた。


「ここ、ラブホ。精算しなきゃ出られない」


ご指摘通り、横の壁に自動精算機が設置してあるのを見つけた。
急いで一万円札を入れると、うんともすんとも言わなかったドアが簡単に開いた。


一歩外に出ようとして、私は恐る恐る、肩越しに彼を見遣った。
視線に気付いたのか、神凪さんが床にうずくまったまま、ちらりとこちらに目をくれる。


「俺はまだ無理だから、気にせずさっさと帰れ」


苦しげな荒い息を続け、弱々しくそっぽを向く彼に、一抹の罪悪感がよぎったものの……。


「っ……」


私は転がるように通路に逃げ出した。
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