魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
カウンターの上に押しつけ、ギュッと握りしめる。
わざわざ背を屈めて私の顔を覗き込んでくる彼に、瞳の奥、心の底まで見透かされている。
居心地悪いのに、私は目を逸らせない。
ゴクッと唾を飲んで……。


「面白がってるだけでしょう?」

「え?」

「私と付き合って、あなたになんのメリットがあるの。所詮本気じゃないから、そんな軽口叩けるんです」


早口で言い捨てると、彼の手の力がわずかに緩んだのが感じられた。
私は勢いよく手を引っ込め、膝の上に置いて隠す。


「女口説くのに、メリットがどうとか考えると思う?」


神凪さんは頬杖をついて、私を斜めの角度から見上げてきた。
流し目がやけに妖艶で、私の胸はいやがおうでも激しく騒ぎ出す。


「私のこと、好きなわけないですよね。打算でもないなら、からかってるとしか思えないじゃないですか」

「……なるほど」


神凪さんは肯定も否定もせず、ひょいと肩を竦めた。
そのまま難しい思案顔をするのを見て、私はなんとなく唇を噛んだ。


否定してほしかったわけじゃないけど、考え込まれるとちょっと癪だ。
からかわれてるだけなのに、心を忙しくしている自分が惨めで情けない。
私は顔を背けて、ズッと洟を啜り……。


「私、帰ります」


隣の椅子に置いたバックから、財布を取り出した。
中から千円札を二枚摘まみ出そうとすると。
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