魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
神凪さんも頬杖をついて、窓の向こうの夜景を見つめている。
そして。


「まっぴら……だけど……」

「え?」


私は、おもむろに独り言ちる彼の横顔を窺った。
聞き拾われたと思ったのか、神凪さんはゆっくり私に目を落とす。


「佐伯を尊敬するあまり、変なところまで見倣って卑屈になってるお前にも、佐伯にとっての今野と同じ存在になれる男がいれば、仕事にも自分にも自信を得て、キラキラ可愛い女になるのかな」


上から目線で言われ、私の心臓がドキッと跳ね上がった。


「そうなった時、他の男に搔っ攫われたら、もったいないって思う気がする」


神凪さんはふんと鼻を鳴らして、再び窓に視線を戻すと。


「……見つけた。飛行機」


好戦的に口角を上げて呟いた。
その言葉に導かれ、機体を探して目を凝らす私に、


「あそこだよ」


人差し指を伸ばして、教えてくれる。
その先に、点滅する赤と緑のランプの軌跡を認めて。



「ほんとだ。見つけた」


私が声を漏らした時――。
濃い影が迫ってきたのに息をのむより早く、唇にちょっと渇いた温かいものが触れた。
せっかく見つけた飛行機が、大きく見開いた視界の端を掠めていく。
最後に湿った吐息が唇をくすぐって、ゆっくり離れていった。
私の瞳いっぱいに、妖艶に目を細めた神凪さんの顔が映り込む。
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